ヤマザキビスケットの逆襲が始まる!?

 ヤマザキビスケット社が12月に入り新製品攻勢に入りました。

 

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 はい、ついにオレオですね。そしてリッツです。知っている人は知っているモンデリーズとヤマザキビスケットの因縁ですが、良い機会ですので簡単にまとめてみました。

 

 ことの起こりは昨年の2月のことでした。

 2月12日、山崎製パンは子会社のヤマザキ・ナビスコが締結している米モンデリーズ・インターナショナルとの製造・販売のライセンス契約を今年の8月末で解消すると発表した。

 ビスケット菓子の「オレオ」や「リッツ」など4商品との関係を打ち切り、ヤマザキ・ナビスコは9月1日からヤマザキビスケットと名を変えることになる。

 出典:「オレオ」「リッツ」から手を引く山崎パンのプライドと勝算 - エキサイトニュース

 

 なぜ山パンはモンデリーズとの契約を終了するのか。
 背景には、モンデリーズの経営戦略の変化がある。モンデリーズは12年10月に米クラフトフーズからスピンオフ後、事業の「選択と集中」を実施した。ノンコア事業を整理し、日本では昨年4月に保有する味の素ゼネラルフーヅの株式を味の素に売却した。
 その一方で、菓子事業はコア事業と位置付けられ、「販売を自社で行う方針になった」(モンデリーズ・ジャパン)。そのため、「製造のみをやってほしいという申し出」(飯島延浩・山崎製パン社長)を山パン側に投げ掛けたのだ。
 しかし、自社で物流やデイリーヤマザキなどの販売網を抱える“自前主義”の山パンにとって、事実上の下請け提案は受け入れ難いものだった。

 出典:「オレオ」「リッツ」から手を引く山崎パンのプライドと勝算 - エキサイトニュース

 

 長年ヤマザキがライセンス生産・販売して育てたナビスコを始めとする各ブランドを丸ごと引き上げて製造だけよろしくといういかにも外資というやり方に対して、ヤマザキがプライドを見せてライセンス契約を解消するという展開は日本中で話題になりました。2016年9月からモンデリーズ社がリッツ、オレオの販売を始めた際は、国内生産から海外生産に変わったこと、味や質感に違いが出てきたことなども話題になりました。

 

 こうして、主力商品を失い会社名の変更も余儀なくされたヤマザキビスケットですが、契約による類似商品の製造販売の制限がなくなったこの12月から上述の通り実質"本家"のオレオやリッツを販売することになりました。この先の競争がどうなるか楽しみです。

 

 この一連の流れで一際目を引くのは、ライセンス契約終了でブランド価値を失ったかに見えたヤマザキビスケットが思わぬ健闘を見せ企業ブランドを維持どころか向上させたということです。

 

 その要因には当然判官びいきがあるでしょう。海外企業のドライな意思決定に振り回される日本企業という構図は日本人にとって非常に分かりやすく情緒に働きかけるものがありました。また、我々が美味しいと愛していたお菓子のブランドだけを取り上げて海外生産に変えてしまうというモンデリーズ社のやり方は少なからず日本人の食に対するプライドを刺激されたということもあるでしょう。それに対決姿勢を打ち出したヤマザキビスケット社に支持が集まるのは当然ともいえます。

 

 また、ヤマザキビスケット社の新ブランド「ルヴァン」が広まり定着していく過程に実に日本人好みのストーリーがあったことも見逃せません。それは、ヤマザキビスケット社がJリーグ開幕から24年間にわたりスポンサードしてきた「ヤマザキナビスコ杯」に関する物語です。
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 当初の予定では2016年のヤマザキナビスコ杯は9月1日からの社名変更後もモンデリーズ側の了承を取って大会名をそのままで進行することになっていました。途中で大会名を変えるというのは普通にあることではありませんが、今回の場合はヤマザキビスケット社のお金で商売敵の宣伝をするようなものでした。

 

 その判断を最終的に変えたのが、村井が飯島とともに訪れていたミラノの夜だった。2016年5月29日の夜だったという。

(中略)

 サッカーに携わるものとして感じる高揚感もあったのかもしれないが、食事などの席で飯島との時間を共有する中、村井は「ここで大会名を変えなければ恩返しはできない」とばかりに本題を切り出した。

「ナビスコの名前を変えますよ」

 飯島は、「ありがとうございます」と短く伝えたという。村井はこの時の決断について次のように回想する。


「飯島社長は、そうしてくれると嬉しいが、そういうわけにもいかないだろうと考えていたのではないかと思っていました。実際に4月の時(前述の27日)に変えましょうかと伝えたときの飯島さんの反応は、『いや、いいんです』ではなかったからです。『えっ?そんなことができるのですか?』というような沈黙があったんです。これは変えてもらいたいのかなと感じてました。

 考えてみると、これは飯島さんにとって難局だったわけです。そこで考えました。これまで24年間、リーグカップの大会スポンサーとして飯島さんには多大な支援をいただいてきた。そんな飯島さんに恩を返せるのはこの場面以外にないのではないかと考えたのです」

出典:ナビスコからルヴァンへ、カップ戦開催中に前代未聞の名称変更の舞台裏 | ルヴァンカップ25年目の真実 | ダイヤモンド・オンライン

「通常Jリーグでは、理事会を開催する前に、Jクラブの全社長が集まる実行委員会という場で承認を取るんです。この決定事項が、理事会にかかって決定されていく。ところが大会名変更については、そうした手順を飛ばして飯島さんにお伝えしていましたから。だから理事会、実行委員会で承認を取れるのかどうか、冒険でした。ところが会議では出席したみなさんが、Jリーグのために二十数年手伝ってくれて、ここ一番の大勝負のタイミングで俺らが協力しなかったらどうするんだみたいな話になって。異論は一つも出なかったと思います

 普段は、クラブ経営やリーグ運営で数字を弾き、理詰めで組織を運営してきた経営者たちだが、もともとはスポーツマンシップを重んじるサッカー人。そんな彼ららしい義理人情で結束した瞬間だった。サッカー界におけるフェアプレー精神が発揮された場面だといってよかった。

(中略)

 大会名称の変更は、それに伴う各種デザインの変更を要する。赤色が主体だった前大会から、ルヴァンのカラーである鮮やかな青色に変更。スタジアムを飾るバナーはもちろん、大会使用球も変更になった。その数1500個に上るが、用具提供スポンサーのモルテンは変更を快諾して請け負ったという。

 また、大会を放送してきたフジテレビは、CGなどの特殊効果の映像を全て差し替える作業を受け入れ、選手協会も大会名変更についてはSNSなどを利用してその告知活動に全面的に協力した。

 商号変更の2016年9月1日に先立つ8月31日に開催された、リーグカップ決勝トーナメント準々決勝第1戦は、かくして「ルヴァンカップ」として開催された。「ルヴァン」の名称は瞬く間にJリーグサポーターの間に浸透し、ナビスコは過去の名前となっていった。

出典:ナビスコからルヴァンへ、カップ戦開催中に前代未聞の名称変更の舞台裏 | ルヴァンカップ25年目の真実 | ダイヤモンド・オンライン

 

 もともと、サッカーファンはスポンサーに対するロイヤリティ(忠誠度)が高いことで知られていますが、長年のスポンサーが苦境に立たされてなおスポンサードを継続してくれる、そしてJリーグ側がそのスポンサーに最大の配慮を見せたという事実がサッカーファンの間で「ルヴァン」という名称を一気に浸透させることになりました。

 

 結果としてヤマザキビスケット社の企業価値はライセンス契約していた有名ブランドを失ってもなお高まることになりました。長年にわたるスポンサードによって多くの人から愛され感謝される企業へとなりうるという好例でしょう。今回引用した「ルヴァンカップ25年目の真実」という連載記事が12月の類似商品販売解禁を前にした11月に公開されたことも少なからず意図を感じます。

 

 これからがヤマザキビスケット社にとっては本当の勝負になると思いますが、多くの人に愛されている企業ですので行く末が気になるところです。

朝日新聞のグラフが胡散臭いー衆議院予算委質問時間

 昨日、お伝えした衆議院予算委の質問時間の配分について報じている朝日新聞のグラフが非常に胡散臭かったので記事にしました。

 

 まずは、こちらのグラフをご覧ください。

 

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出典:質問時間は与党5・野党9 衆院予算委、与党が押し切る:朝日新聞デジタル

 

 このグラフを掲載した記事の書き出しはこのようになっています。

 

国政全般を議論する衆院予算委員会で、野党の質問時間が削減されることになった。

出典:質問時間は与党5・野党9 衆院予算委、与党が押し切る:朝日新聞デジタル

 

  さて、このグラフに嘘はないのですが比率と量を意識的に混同して「質問時間が削減された」と感じるように誘導するフェアでないグラフだと思います。

 

 まず、はじめに比較している会期の性質の問題があります。現在、開かれているのは解散総選挙の後に開かれる「特別会」で衆議院議長・衆議院副議長の選出と内閣総理大臣指名選挙が主目的の会期です。日数も3日程度と短期間のことが多く予算委員会の審議が行われないことも殆どです。つまり、ゼロベースから必要に応じて審議時間を設定するのが特別会での予算委員会の位置づけになります。一方、比較対象にしている2月の予算委員会は常会に当たり毎年決まった期間に開催されるいわゆる通常国会です。この第193回(常会)において予算委員会は1月末から7月末までの間に21回開かれています。質的にも量的にも異なる会期から2日を抜き出して「時間」という量に注目して比較するのはフェアでありません。そもそも朝日新聞が抜き出しているのは、予算委員会の序盤に3日間に渡って行われた基本的質疑のうちの2日間です。「比率」に着目して比較するのであれば基本的質疑の3日間や、第193回の予算委員会全体といった総数に対する比率を出すのがフェアであると言えます。もっとも、どこを切り取っても20:80が36:64になったという単純な図式ですのでわざわざ比率を図示してみせる意味はあまりありませんが。

 

 では、過去のどの会期と比較するのがフェアと言えるのでしょうか?

 答えは「ない」です。上述の通り特別会での予算委員会の審議は都度協議され必要に応じて行われるものですので、比較対象となりうる会期が存在しないのです。ウィキペディアの特別国会一覧をご覧いただければわかりますが、今回と比較可能な会期は見当たりません。最も日数が近いのは第163回国会ですが、これはあの郵政選挙後の特別会で郵政関連法案などが数多く審議されており事情が異なります。

 

 それでは、今回の配分時間の見直しについて量的に比較する方法はあるでしょうか?結論から言うとひとつだけあります。それは、慣例に従って第195回(今回)を配分した場合との比較です。

 

 ここで今回の経緯を振り返ってみましょう。

 ①与党若手議員が発言機会を求めて質問時間の配分見直しを提案。

 ②与党が1日半の予算委員会審議を提案。(時事通信報道)

  →与野党で質問時間の配分で対立(6対4 or 2対8)

 ③野党が「野党分の削減ではなく、審議時間全体を増やして調整するよう」求める。(朝日新聞報道

 ④与野党が互いに妥協して2日間の日程に決定。

   与党:6対4から36対64に。

   野党:2対8から36対64に。

   ※審議時間全体を増やしたために与野党ともに質問時間は増加。

 

 この流れを念頭に慣例に従った配分と協議の結果決まった配分を「時間」という量ベースで比較してみましょう。グラフにするとこのようになります。

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 このグラフを見れば一目瞭然ですね。野党の質問時間は減っているどころか増えています。与党の質問時間も増えていますしなんて素晴らしい解決案なんでしょう(笑)

 

 異論はたくさんあるでしょうが、報道されている事実を元に纏めるとこの様になります。もちろんこんな朝三暮四のお手本のような話を真に受けろとは言いませんが、フェアネスでは朝日新聞のグラフに一切劣ることはないと思います。自民党の老獪(?)な交渉術に翻弄される野党という図式を見事に表していると思います。今回に関しては1日半と言い出した時点で自民党が勝っていたということです。

 

 今回の配分を前例としないという点で与野党は合意しています。これは、今回の予算委員会での審議を通して与野党が国民にこの問題での正当性をアピールする機会を得たことを意味しています。大幅に増えた自民党の質問時間を有効に活用できれば、恒久的な配分ルールの見直しへの国民の支持は高まるでしょう。野党議員も同じことが言えます。今回の予算委員会での審議の質が次の国会での時間配分をめぐる争いで強力な武器となります。その意味で本国会は議員の見本市の様なものと言えるでしょう。我々がするべきことは、我々を代表する場である国会において誰にもっと発言させるべきかを見極めることでしょう。

 

 それゆえに、この問題に関して私はフェアネスを重要視しています。正しい前提知識を持って、前向きな議論がなされることを願っています。この問題に関してはこれまでも多く言及してきました。多くの事実誤認や虚偽がまかり通っているからです。以下の3記事はこの問題の前提となる部分について書いていますのでぜひご覧ください。

 

記事の見出しと本文で主語が異なるよくある話

国会質問時間配分問題の議論はまず立憲民主党の嘘を正すことから

話し合いの結果を評価する与党と批判する野党ー国会質問時間配分がひとまず決着

話し合いの結果を評価する与党と批判する野党ー国会質問時間配分がひとまず決着

 なんどかこのブログで記事にしている衆議院の予算委員会の質問時間配分についていったん決着したようです。

 

森山氏は「5対5」とすべきだとの主張を取り下げて一定程度野党側に譲歩する考えを示し、辻元氏も「2対8」との野党側の立場から歩み寄る意向を伝えた。
 これを受け、衆院予算委員会の与野党筆頭理事が協議し、27、28両日に安倍晋三首相と全閣僚の出席を得て、7時間ずつ審議を行うことで合意。時間配分は22日の理事懇談会で決めることになった。与党は当初、予算委の日数を「1日半」と提案していた。

出典:質問時間、与野党が譲歩=27、28日に衆院予算委:時事ドットコム

 

焦点となっていた時間配分は、計14時間を与党5時間・野党9時間とすることで与野党が合意した。野党36%・与党64%となる計算で、野党が維持を求めていた「与党2割・野党8割」の慣例から、与党が積み増した形だ。

 出典:質問時間は「与党5時間・野党9時間」で合意 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 

 もともと1日半で「与党2時間・野党8時間」で20%:80%の配分ったものを半日延ばしてその4時間を3:1で分配して「与党5時間・野党9時間」の36%:64%にしたということです。これまでの議論で野党側の主張「野党の質問時間の削減は認められない」と自民党の「与党議員の質問時間確保を」という主張の両方を考えると実に素晴らしい結論だと思います。野党の質問時間を減らさずに与党の質問時間を確保したのですから非の打ち所がない決着と言えます。

 

 報道では与野党が譲歩したということになっていますが、実際に譲歩したのは殆ど与党だけと言えます。事実、立憲民主党の福山幹事長が事前に求めていた通りの結果になっています。

立憲民主党福山哲郎幹事長は「自民党が審議したいなら、その4倍(の時間を)野党に頂ければいい」と語り、野党分の削減ではなく、審議時間全体を増やして調整するよう求めた。

出典:質問時間削減に野党幹部反発 審議時間増など訴え:朝日新聞デジタル

 

 にも拘らず譲歩した与党とほぼ要求が通った野党での評価が正反対に見えます。

この日の予算委理事懇後、与党筆頭理事の菅原一秀氏(自民)は記者団に「今までの2対8から一歩前進した」と語った。これに対し、野党筆頭理事の逢坂誠二氏(立民)は「非常に苦しい結果だ」と述べた。

 出典:質問時間は「与党5時間・野党9時間」で合意 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 

 なんとも不思議なことです。

 

理事懇後、与党筆頭理事の菅原一秀氏(自民)は記者団に「今までの2対8から一歩前進した」と評価。野党筆頭理事の逢坂誠二氏(立憲民主)は「質疑をしないといけない、質疑時間を確保したい、という思いが交錯する中である種、仕方のない結論だ」と述べた。

出典:与野党「5対9」で決着=衆院予算委の質問配分:時事ドットコム

 

 もっとも、時事通信の記事では若干ニュアンスが異なるようですが。

 なんにせよ、明日以降に与野党の各議員などからのリアクションが報じられると思いますが、前提として「野党の質問時間は減っていない」という点は押さえておきましょう。

 

 今回は全体の時間を増やすという解決方法となりましだが、そのこと自体への賛否も当然ある筈です。まずは、これだけ頑張って得た質問時間を自民党の若手の皆さんは無駄だったと言わせないような有効な使い方をしてほしいですね。

【速報】読売誤植!

 どうでもよいことなのですが、面白かったので記事にします。

 

質問時間は「与党5時間・野党9時間」で合意 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

衆院予算委員会は22日の理事懇談会で、27、28の両日に安倍首相と全閣僚が出席し、7時間ずつ審議を行うことを正式に決めた。


 焦点となっていた時間配分は、計14時間を与党5時間・野党9時間とすることで与野党が合意した。野党36%・与党64%となる計算で、野党が維持を求めていた「与党2割・野党8割」の慣例から、与党が積み増した形だ。

 質問時間の配分を巡っては、自民党が「与野党等分」を要求して野党と対立していたが、21日に自民、立憲民主両党が歩み寄りで合意していた。この日の予算委理事懇後、与党筆頭理事の菅原一秀氏(自民)は記者団に「今までの2対8から一歩前進した」と語った。これに対し、野党筆頭理事の逢坂誠二氏(立民)は「非常に苦しい結果だ」と述べた。

 

 よやく決着したという記事なのですが誤植のせいで真逆のニュースになっていました。

 

こちらがスクリーンショット ※修正済みです

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ちなみに、Twitterはまだ残っています。

 

 

いちおうスクリーンショット

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 本当にどうでもいい記事で失礼しましたm(_ _)m

 

追記:真面目な記事も書きましたのでぜひご覧ください。

話し合いの結果を評価する与党と批判する野党ー国会質問時間配分がひとまず決着 - たろちゃんの日記

ドイツのメルケル政権を終わらせるのはエネルギー政策?難民政策?ードイツ議会の今を解説

 9月の総選挙から約2か月以上も新たな政権を樹立できずにいたドイツで連立協議が決裂しました。これにより、議会の解散総選挙か少数与党による政権樹立かのいずれかへと進むことになります。

 

 世界でも有数の大国にも拘らずドイツの政治情勢については日本ではあまり報道されないのでいまいちイメージが掴み辛いので簡単にまとめてみました。

 

 一言でいうと、 これが

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出典:ドイツ連邦議会選 メルケル氏が楽勝しなかった場合どうなる - BBCニュース

 こうなった

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出典:ドイツの連立協議が決裂 FDP離脱 - BBCニュース

 

ということになります。

 

 

 各党について簡単に説明してみます。

CDU/CSU:ドイツキリスト教民主同盟/バイエルン・キリスト教社会同盟

メルケル氏が率いる与党。第一党は死守したものの議席を大きく減らす。


SPD:ドイツ社会民主党

これまでCDU/CSUと共に連立政権を形成してきたが選挙で大敗。選挙後に政権離脱を表明。

 

The Left:左翼党

ドイツの社会主義政党。選挙前は野党第一党だった。総選挙で議席を僅かに増やすも第5党に後退した。


The Greens:緑の党

脱原発・風力発電の推進・二酸化炭素の削減などの環境政策を掲げる日本でもなにかと有名な政党。左翼党と同じく議席僅かに増やすも第6党に後退した。


FDP:自由民主党

新自由主義的な政党。前回選挙での0議席から大躍進。今回の連立協議の肝となる。

 

AfD:ドイツのための選択肢

移民排斥などを掲げるいわゆる極右政党。今回大躍進で初めての議席獲得で第3党になる。

 

 社会主義政党である左翼党は所謂「確かな野党」枠でしょうか(笑)基本的に連立政権の枠組みには入っていません。また、AfDについては全ての政党が連立を拒否しています。その上でSPDが連立から離脱した為、過半数を占める政権を作るにはCDU/CSUと緑の党、FDPの3党が連立を組む必要があります。

 

FDPのリンドナー党首は、「妥協の目標を疑問視する声が上がり、今日は前進どころかむしろ後退した」と述べ、「偽りながら政権を担うくらいなら、政権を担わない方がよい。さようなら!」と付け加えた。
連立協議を行う各党の間には税制や難民支援、環境政策をめぐる深い対立があるもよう。
最も激しい対立点はシリア難民に家族の呼び寄せを許可するかどうかだと、BBCのジェニー・ヒル記者は指摘する。ヒル記者によると、AfDの躍進が念頭にある保守派CDU・CSUは、いわゆる家族再会について慎重な姿勢を取っており、呼び寄せが可能になるまでの時間を延長したい考えだという。

出典:ドイツの連立協議が決裂 FDP離脱 - BBCニュース

 

こうした状況を背景にメルケル氏の連立協議が混乱に陥っている。同氏が連立パートナーとして期待する緑の党は、汚染度が非常に高い20カ所の石炭火力発電所を皮切りに石炭火力を禁止することで、エネルギー革命のひずみを増幅したいと考えている。メルケル氏率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と自由市場主義の自由民主党(FDP)は、せいぜい10カ所の発電所の閉鎖にとどめたいと望んでいる。22年以降に原発がなくなると、エネルギー面から経済が一段と圧迫されることを認識しているためだ。

出典:【社説】独エネルギー革命のメルトダウン - WSJ

 

  FDPと緑の党との間での政策の不一致が原因となり連立はまとまらなかった様です。

  大変なことになっていますね(笑)「安倍政権を倒せ」の一点で纏まった野党共闘で大盛り上がりだった日本の政治とどちらが望ましいのかは考えない方が幸せなのでしょうか。

 

 この後、議会を解散しての再選挙になる公算が大きいですが、AfDの躍進を望むのか、危機感から揺り戻しが起きるのかドイツ国民はどういう判断をするのか注目ですね。

 

【ネタ元特定済み】国連機関のレベルの低さを舐めてはいけないー麻生太郎姥捨て画像事件

 みんな大好き国連がらみのニュースです。

 

「姥捨て」題材のコラージュに麻生太郎氏の顔写真。国連公認の月刊誌

国連公認の月刊誌「UNスペシャル」10月号に、老人を山に捨てる「うば捨て」を題材にしたコラージュが掲載された際、麻生太郎副総理兼財務相の顔写真が用いられていた。在ジュネーブ日本政府代表部が「我が国の要人に関して不適切だ」と申し入れ、編集部はPDF版の写真を差し替えた。

 この雑誌は英語と仏語で記され、編集部はスイス・ジュネーブの国連欧州本部にある。「ジュネーブにおける国連と世界保健機関(WHO)の国際公務員の公式雑誌」とされ、公称1万500部。国連関係者や各国政府代表部などに配布されるほか、ネット上にPDF版を掲載している。

 問題のコラージュは、カザフスタン出身の国連職員が執筆した「オバステ」という英文記事に添えられていた。記事は長年勤めた元職員の待遇について触れ、1958年の木下恵介監督の映画「楢山節考」で描かれたうば捨てのようにならないように、と警鐘を鳴らしたものだった。

 コラージュには日本語で「麻生太郎 姥(うば)捨て」と記されていた。ネット上の素材を転載したものとみられ、作者や意図、作成時期は確認されていない。

 編集部関係者は、日本語のわからない外注のデザイン担当者が無作為に採用したもので、意味も知らなかったと説明。麻生氏が日本の元首相ということも認識していなかったという。日本政府代表部の申し入れを受けた後、PDF版について、コラージュを1983年の「楢山節考」(今村昌平監督、緒形拳主演)の画像に差し替えた。(ジュネーブ=松尾一郎)

 

 画像検索してみると2013年にオランダ人のTjebbe van Tijenさんがflickrに投稿したこの画像が元ネタの様ですね。

Japan's finance minister tells elderly they should 'hurry up and die' to help reduce country's rising welfare bill

 

JAPANESE MINISTER OF FINANCE TARO ASO (麻生 太郎 - 1940-) IN A NEW RENDERING OF THE CLASSIC TALE ABOUT UBASUTE (1)

 

"Japan's finance minister tells elderly they should 'hurry up and die' to help reduce country's rising welfare bill Comments made by Japan's finance and deputy Prime Minister Taro Aso.(2)

 

Country is facing demographic crisis with an aging population and rapidly shrinking birthrate New welfare cuts expected to be announced in the coming days -Japan's new finance minister has claimed that the elderly should 'hurry up and die' to help ease the cost to the taxpayer of caring for them, it has emerged.Taro Aso made the controversial statement as he discussed how to deal with the country's emerging demographic crisis as its population continues to shrink while life expectancy soars. Aso, who said he would hate to be a burden on the state, told the national council on social security reforms: 'Heaven forbid if you are forced to live on when you want to die." (3)

 

 

  機械翻訳ですが、

ジャパニーズ・ミステリー・オブ・ファイナンス・タロアソ(麻生太郎 - 1940-)UBASUTEについての古典的な売り出し(1)

 

日本の財務相は、日本の財政と麻生太郎副首相のコメントを受けて、高齢者に福利厚生費の削減を促すために「急いで死ぬべきだ」と述べている(2)

 

国は人口の高齢化と少子化急速な人口動態の危機に直面しています。今後、新しい福祉厚生が発表されると予想されています.-新財務相は、老人は、納税者の​​負担を軽減するため、麻生太郎は人口の減少が続き、人生の期待が高まる中、国の人口動態の危機にどう対処するかを議論する中で、論争の的な声明を発表した。国家負担を嫌う麻生総理は、国家評議会に対し、社会保障改革について、「あなたが死にたいときに生きなければならないと天は禁じられる」と述べた。(3)

 

 なんとなくこの画像が作られた背景は分かりますね(笑)

 

 ただ、国連職員という立場にある人物が、わざわざトリミングした部分の文章から日本の総理に対しての風刺的メッセージの込められた画像であることを読み取って、赤色の文字に何らかの意味がありそうだと想像できなかったということには驚きです。

 それ以前にネット検索で拾ってきた画像を国連の刊行物で無断使用しているというのはコンプライアンスもくそもないのかと笑ってしまいます。

 

 日本人が大好きな国連機関ってこの程度のレベルなんだということはしっかりと理解しておくようにしましょう。

 

 

Twitter認証バッジをどう捉えるかーヘイトスピーチと言論の自由

 ツイッターの認証バッジに関する問題が話題になっていますが、単純によくあるヘイトスピーチと言論の自由の問題の対立構造で語ってしまうのは勿体ないと思います。。ことの経緯は以下のリンク先が詳細にまとめられているのでご確認ください。

 

Twitter、批判受け認証バッジの仕組みを改定。再審査でルール違反者からの剥奪を開始 - Engadget 日本版

なりすまし被害に遭いやすい著名人やブランドもよく付けていますが、従来からジャーナリストに多く与えられてきたことが示すように、アカウントの人品骨柄や発言の内容ではなく、そのツイートが誰の発言なのか、発信元を確認できるようにすることが本来の目的です。

しかし、最近のTwitter上でのヘイトスピーチや嫌がらせ、暴力の扇動、脅迫といった問題について、対応が不十分だとTwitter社への批判が高まるなかで、「そもそも差別発言や暴力を扇動するようなアカウントにも「Twitterが認めた」証があるのはどういうことか、発言の内容やアカウントにお墨付きを与えているのか」といった声があがっていました。

 

 Twitter社の対応は以下の様なものです。

 

 

 これは実質的に、認証バッジに「Twitterに(価値を)認められたアカウント」という意味合いがあることを認めた上で、新しいガイドラインを作成してツイッターが価値を認めたアカウントにのみバッジを付与し、逆に価値を認めないアカウントからはバッジをはく奪するという宣言となっています。

 なぜならばTwitterは全てのユーザーに適用されるルールを既に持っているからです。

 The Twitter Rules | Twitter Help Center

Twitterのサービスにアクセス、または利用するすべての個人は、以下のTwitterルールを遵守する必要があります。このルールを守っていただけない場合、Twitterによる以下のいずれかの強制執行措置の対象となる場合があります。

  • ・新たな投稿や他のTwitter利用者と交流する前に、禁止されているコンテンツを削除すること
  • ・投稿の作成や他のTwitter利用者との交流の一時的制限
  • ・電話番号またはメールアドレスによるアカウント所有権の認証の要求
  • ・アカウントの永久凍結

永久凍結に備えて別のアカウントを作成した場合、新しいアカウントも凍結されます。

 

  このルールを前提にするとアクティブな状態にあるアカウントはTwitterルールに違反していないとみなすことができます。にも拘わらず認証バッジの付与に新たなガイドラインを設けて別の基準を用意するというのは、Twitter社が認証バッジに単なる本人確認以上の価値を設定するということに他なりません。

 すなわち、Twitterルールを守らない凍結済みアカウントとTwitterルールの枠内にいる一般アカウント、そして認証バッジのガイドラインに適合した特別なアカウントの3つが生まれることになります。

 

 これはTwitterという言論空間が完全にフラットな場ではなくなったということを意味します。Twitterというネットワークは誰にでも開かれたものではなく、一定の政治的・思想的立場に立った人たちのネットワークになります。これから先、Twitter社はあらゆる方向からガイドラインの運用とガイドラインそのものについて働きかけを受けることになるでしょう。これまで以上に「差別発言や暴力を扇動するようなアカウント」の定義や個々のアカウントに対する判断についての批判と要望、議論の的になることでしょう。それが、建設的な議論となれば良いのですが、自分と異なる思想や価値観の人間を排除するという傾向が強まることが懸念されます。

 

 ヘイトスピーチと言論の自由に関する議論で重要なのは、ヘイトスピーチそのものの是非ではなく言論の自由の対象とならない「規制されるべき言論」について誰が決めるのかという点です。その背景には一見議論の余地のない差別や暴力といったトピックが恣意的な拡大解釈を伴う際限のない規制を生む端緒となってしまうことへの危機感があります。

 

 今、Twitter上で起きていることはこの点で非常に危険です。幸いなことにTwitter社はこの件に関してある程度情報を公開しながら進めていく方針の様ですので、まずはこれを注視しましょう。その上で必要に応じて建設的な議論をしていきたいと思います。

 

米国抜きのTPP発効は日本外交の政治的勝利

 アメリカのトランプ大統領が離脱を表明して過去のものになったかと思われたTPPが11か国での発効へ向けて大筋合意しました。世界のGDPの13.9%を占める規模とはいえ米国の離脱でパワーダウンしたイメージですが、国際政治的には非常に大きなインパクトがあったようです。

 

 近年の国際政治ではアメリカから中国へのシフトが大きな流れとして意識されてきました。特にトランプ政権誕生後は自国中心主義を突き進むアメリカを傍目に中国が国際的な枠組みを主導していこうという意図が明確に表れていました。TPPはパリ協定離脱とも並ぶ大きなインパクトで注目されていました。

東京新聞:日米主導の「TPP」停滞で 中国中心の「RCEP」攻勢:経済(TOKYO Web)

中国、不戦勝か――米「パリ協定」離脱で | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

 

 その状況の中で日本がリーダーシップを発揮してTPPの発効への道筋をつけたことは大きな政治的勝利と言えます。海外メディアも日本のこの成果を高く評価しています。

 

中国か米国か? アジアの答え「いずれもノー」 - WSJ

米国の避けがたい衰退が中国の強力な台頭を招く。これは分かりやすいシナリオだ。

 中国の習近平国家主席が国内で権力基盤を盤石にし、海外では1兆ドル(約114兆円)を超える巨大経済圏構想「一帯一路」を推進する。「ポスト米国」時代を中国が支配するとの未来図は、確かに想像が容易になりつつある。

 だが待って欲しい。アジア諸国には他の考えがある。習主席とドナルド・トランプ米大統領が先週、ベトナムで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席している頃、最も注目すべき出来事は米中がいずれも関与していないところで起こっていた。

 日本が奮い立たせたことで、環太平洋経済連携協定(TPP)の参加11カ国は新協定案で合意に近づいたのだ。これは市場保護と国有企業を優遇する中国の経済モデルに対する自由主義の代替策を提供する一方、トランプ政権が2カ国協定を推進する中で、多国間相互自由貿易の構想を推進する。

 

過去1週間に起きたアジアに関する他の大きな展開も、安倍晋三首相が率いる日本が主導した。日米にインド、オーストラリアを加えた民主主義4カ国による枠組みの復活だ。「日米豪印」当局者は先週11日にマニラで初会合を開いた。

(中略)

 キングス・カレッジ・ロンドンのハーシュ・V・パント教授(国際関係)は、オーストラリア政府の心変わりを受けて復活した日米豪印4カ国の枠組みについて、「中国の台頭と米国の不能さ」に対処するための包囲網作りだと述べる。

 その両方について懸念を高めている安倍首相は、これまでも似た構想を提案しており、2012年に地滑り的勝利を収めて首相に返り咲く前には、日米豪印4カ国を結ぶ「ダイアモンド」と呼んでいた。それ以前の2007年にインド議会で行った演説では、太平洋とインド洋は「自由と繁栄の海」として「ダイナミックな結合」をもたらしていると語っていた。

 

コラム:5分で分かる米国抜きの新TPP | ロイター

●政治的には何を意味するか

パワーバランスの変化を予兆している。TPPを復活させるなかで、とりわけ日本やオーストラリアなどの政府は、多国間協定の策定において、これまで米国が担ってきた指導的役割を一部買って出ている。地域の通商・外交において、中国が米国の後を埋めるのが自然だと多くの国が思っていたなか、彼らは存在感を強めている。

 

 これからの国際社会は孤立する米国、停滞する欧州と覇権を狙う中国という構図になると予想されています。その中でTPPの枠組みを通してアジア太平洋地域の国々が新たな選択肢を示せたことは大きな意味を持っています。その動きを日本が主導したという事実が今後の外交にもたらすメリットは計り知れません。この点については安倍首相の大きな得点として評価するべきだと思います。

 

LINEに送信取消が実装へーGmail等ではもうできるって知ってた?

 LINEでついに「送信取消」機能が実装されるそうです。

nlab.itmedia.co.jp

 

 送信相手や内容を間違ってしまった経験は誰もがある筈です。

そんな誤送信の思い出をユーザーから募集する、「#LINE誤爆 Black FRIDAY」キャンペーンも11月16日から24日まで実施。取り消しが利かない時代が終わる前に、失敗を笑い飛ばそうという試みです。

 期間中はLINEのタイムラインとTwitterで、苦い思い出のスクリーンショットかテキストにハッシュタグ「LINE誤爆」を付けた投稿を募集。選考委員会に選ばれた20の投稿が、11月24日の10時30分にキャンペーンサイトに掲載されます

 

 LINEではこのように大々的にキャンペーンを打つようですが、GmailやOutlookメールなどの各メールサービスでは既にこの「送信取消」機能が使えるってことご存知でしたか?

 

 ご存知の方も多いとは思いますが簡単にご紹介しておきます。

 

 まず、Gmailの場合。

 設定メニューを開きます。

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そうすると、当たり前のように「送信の取り消し」という項目があります。

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 ここにチェックを入れれば設定は完了です。ちなみにメール送信から取消可能な時間は30秒まで選択できます。

 

 ちなみに、Outlookの場合でもオプション画面から設定できます。

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 仕事などでメールを使われている方は設定しておくと万が一の時に九死に一生となるかもしれません。

 ご参考にしていただければ幸いです。

国連人権理事会ってなんだろう?

 日本の「報道の自由」についてセンセーショナルな見出しが並んでいます。

 

メディアの独立性懸念、国連人権理事会が日本を審査 :日本経済新聞

日本での「報道の自由」各国懸念 国連人権理事会の審査:(北海道新聞)

国連人権理事会で問題視 日本の「報道の自由」に批判集中 - エキサイトニュース

日本の「報道の自由」に懸念=5年ぶり審査で国連人権理:時事ドットコム

 

 報道の自由と言えばお馴染みの国境なき記者団による「世界報道自由ランキング」ですが、今回は国連の人権理事会で取り上げられたということです。

 

 はて?人権理事会で報道の自由?と不思議な感じもしますが、そもそも人権理事会とは何なのでしょうか?

 検索してみると国連広報センターの説明動画がありました。

 

 なんとなくイメージは掴めたでしょうか?

 ちなみに、今回各メディアで審査と言っているのはこの動画の後半に登場した普遍的・定期的レビュー(UPR)に当たります。国連加盟国を5年弱の周期で定期的に審査するという制度なんですね。細かなところについては外務省のサイトが詳しいので気になる方はご覧ください。

UPR(普遍的・定期的レビュー)の概要 | 外務省

 

 私が気になったのはこのUPRの作業部会の報じ方としてこれらの見出しは適切なのかということです。人権理事会ですから当然のこととして人権にまつわる広範な問題について取り扱われている筈です。そのなかで多くのマスメディアが選択したトピックが「報道の自由」というのは我田引水の香りもします。

 

 残念ながら実際の作業部会の議事録ものを見つけ出すことができませんでしたので、この辺りについてはなんとも断言できないのですが、会議のアジェンダらしい資料は出てきました。

Universal Periodic Review - Japan

 私の英語力では四苦八苦です(苦笑)

 再び外務省のサイトをよく見てみると・・・・・・。

我が国の第3回審査に先立って,我が国の人権状況に関する報告書を2017年8月に提出。政府報告審査は同年11月14日に実施された。なお,今後,審査の結果文書は11月16日に作業部会で採択された後,2018年2月~3月,第37回人権理事会本会合で正式に採択される予定

 なるほど。各紙報道に「各国から勧告」という表現が多く使われていましたが国連の機関としては今日の議論の結果を文書にして明日取りまとめるという手続きなんですね。語学力の低い私はこちらの文書の和訳のリリースを待ちたいと思います。

 

 ちなみに、アジェンダを流し読みしたところでは男女共同参画や警察の取調可視化、死刑廃止やロヒンギャ問題への対応に至るまで多岐にわたる内容が取り上げられていました。語学堪能で国連の取材をできる様な優秀なジャーナリストの方にはぜひとも、作業部会を通して各国がどの問題にどれほどのプライオリティを置いていたのかという客観的な分析結果を報道していただきたいと願う次第です。

 

 余談ですが国境なき記者団の「世界報道自由ランキング」についてはこちらの記事が非常に興味深いです。

日本が低迷する「報道の自由度ランキング」への違和感 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

「報道の自由度ランキング」は当該国の専門家へのアンケートによる質的調査と「ジャーナリストに対する暴力の威嚇・行使」のデータを組み合わせて作成される。「専門家」とは報道関係者、弁護士、研究者などであり、彼らが前年比で報道の自由を実感できたか否かが大きなポイントとなる。

一方、「国境なき記者団」は日本の「報道の自由度」下落の要因として、特定秘密保護法などの影響で日本の報道が自己検閲状況に陥っていることを挙げている。しかし、「自己検閲」をいうのであれば、それは近年に始まったわけでも、また安倍政権で急に強化されたわけでもない。そもそも特定秘密保護法にしてからが、その法案を準備したのは民主党の菅内閣である。二〇一〇年九月の尖閣諸島付近での中国漁船衝突事件の映像流出に対処する法整備が直接の動機だった。「自己検閲」状況が進んだとしても、それは特定秘密保護法制定よりも先に述べた内閣支持率政治の影響の方が大きいと見るべきだろう。

 

 この記事を読んでいたことが今回の各紙の見出しに引っかかった原因かもしれません(笑)