国連人権理事会ってなんだろう?
日本の「報道の自由」についてセンセーショナルな見出しが並んでいます。
メディアの独立性懸念、国連人権理事会が日本を審査 :日本経済新聞
日本での「報道の自由」各国懸念 国連人権理事会の審査:(北海道新聞)
国連人権理事会で問題視 日本の「報道の自由」に批判集中 - エキサイトニュース
日本の「報道の自由」に懸念=5年ぶり審査で国連人権理:時事ドットコム
報道の自由と言えばお馴染みの国境なき記者団による「世界報道自由ランキング」ですが、今回は国連の人権理事会で取り上げられたということです。
はて?人権理事会で報道の自由?と不思議な感じもしますが、そもそも人権理事会とは何なのでしょうか?
検索してみると国連広報センターの説明動画がありました。
なんとなくイメージは掴めたでしょうか?
ちなみに、今回各メディアで審査と言っているのはこの動画の後半に登場した普遍的・定期的レビュー(UPR)に当たります。国連加盟国を5年弱の周期で定期的に審査するという制度なんですね。細かなところについては外務省のサイトが詳しいので気になる方はご覧ください。
私が気になったのはこのUPRの作業部会の報じ方としてこれらの見出しは適切なのかということです。人権理事会ですから当然のこととして人権にまつわる広範な問題について取り扱われている筈です。そのなかで多くのマスメディアが選択したトピックが「報道の自由」というのは我田引水の香りもします。
残念ながら実際の作業部会の議事録ものを見つけ出すことができませんでしたので、この辺りについてはなんとも断言できないのですが、会議のアジェンダらしい資料は出てきました。
Universal Periodic Review - Japan
私の英語力では四苦八苦です(苦笑)
再び外務省のサイトをよく見てみると・・・・・・。
我が国の第3回審査に先立って,我が国の人権状況に関する報告書を2017年8月に提出。政府報告審査は同年11月14日に実施された。なお,今後,審査の結果文書は11月16日に作業部会で採択された後,2018年2月~3月,第37回人権理事会本会合で正式に採択される予定。
なるほど。各紙報道に「各国から勧告」という表現が多く使われていましたが国連の機関としては今日の議論の結果を文書にして明日取りまとめるという手続きなんですね。語学力の低い私はこちらの文書の和訳のリリースを待ちたいと思います。
ちなみに、アジェンダを流し読みしたところでは男女共同参画や警察の取調可視化、死刑廃止やロヒンギャ問題への対応に至るまで多岐にわたる内容が取り上げられていました。語学堪能で国連の取材をできる様な優秀なジャーナリストの方にはぜひとも、作業部会を通して各国がどの問題にどれほどのプライオリティを置いていたのかという客観的な分析結果を報道していただきたいと願う次第です。
余談ですが国境なき記者団の「世界報道自由ランキング」についてはこちらの記事が非常に興味深いです。
日本が低迷する「報道の自由度ランキング」への違和感 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
「報道の自由度ランキング」は当該国の専門家へのアンケートによる質的調査と「ジャーナリストに対する暴力の威嚇・行使」のデータを組み合わせて作成される。「専門家」とは報道関係者、弁護士、研究者などであり、彼らが前年比で報道の自由を実感できたか否かが大きなポイントとなる。
一方、「国境なき記者団」は日本の「報道の自由度」下落の要因として、特定秘密保護法などの影響で日本の報道が自己検閲状況に陥っていることを挙げている。しかし、「自己検閲」をいうのであれば、それは近年に始まったわけでも、また安倍政権で急に強化されたわけでもない。そもそも特定秘密保護法にしてからが、その法案を準備したのは民主党の菅内閣である。二〇一〇年九月の尖閣諸島付近での中国漁船衝突事件の映像流出に対処する法整備が直接の動機だった。「自己検閲」状況が進んだとしても、それは特定秘密保護法制定よりも先に述べた内閣支持率政治の影響の方が大きいと見るべきだろう。
この記事を読んでいたことが今回の各紙の見出しに引っかかった原因かもしれません(笑)