日本経済に必要なのはフェアトレードだ!

 フェアトレードというと主に先進国と発展途上国の関係で用いられる言葉です。

フェアトレードとは? | わかちあいプロジェクト

フェアトレード(Fair Trade : 公平貿易)とは、発展途上国で作られた作物や製品を適正な価格で継続的に取引することによって、生産者の持続的な生活向上を支える仕組みです。従来の一方的な国際協力・資金援助は、援助する側の都合によって左右され、継続性に欠けるという問題点がありました。それに対し、フェアトレードは、私たち消費者が自分の気に入った商品を購入することでできる、身近な国際協力のかたちです。

 

 しかし、冷静に考えてみて現在の日本で「作物や製品を適正な価格で継続的に取引」していると胸を張って言える企業がどれほどあるでしょうか。国際的に見られる先進国と発展途上国という構図は分かりやすいものですが、国内でも似たようなことが起こっています。それは消費者第一主義に起因します。消費者の権利、利便性を追及するあまりにそれを提供する企業や労働者が搾取される結果となっています。日本社会の異常な安値礼賛、過当な値下げへの圧力は日本経済の縮小を招きかねない悪弊と言えます。

 

 私はこれを打破する策として国内でフェアトレードの概念を広げ実践していくことが有効だと考えています。全ての財、サービスに対して適正な対価を払い、また自分が提供する際も適正な対価を要求するという考え方です。現状では一部のコアな技術を持った企業でしか実現不可能でしょうが、だからこそ国民的議論として広がっていけばよいなと考えています。

 

 その為の一歩として考え方の転換が必要だと思います。

「ドイツと日本は、国民をどうとらえるかの考え方が違います。ドイツは国民をどちらかといえば労働者だととらえて、労働者の権利に重きを置いてきました。日本は消費者だととらえて、消費者の権利を重視していると思います」

ドイツでは労働者の権利を重視するために休日を充実させ、1日に働く時間も厳格に決め、徹底的に労働者が働きやすい国をつくりあげてきました。

ところが、日本では消費者としての権利を重んじたので、「お客様は神様」という意識が強くなったのではないでしょうか。だから、“神様”のためにコンビニは24時間オープンし、土日に休む店などもってのほか、ネットで注文したら商品が翌日に届くのは当たり前という風潮になっているのです。

 出典:デキる人は「他人は別の惑星の人だ」と考える | ワークスタイル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

 基本的に全ての国民は労働者であり消費者です。そして、労働者と消費者の利害は時として相反します。現在の日本では消費者のエゴが労働者の権利を侵してしまっているのではないでしょうか。

 

 今年は宅配便業界の値上げが大きな話題になりました。私はこの問題の本質は企業や労働者が適正な対価を得られる状況にないことにあると考えています。

ヤマトHDが人手不足よりも恐れる「送料無料」という意識 - エキサイトニュース

 それは、これまでも価格比較サイトが重宝がられてきたように消費者が価格に敏感だったこともあるが、送料が余計な出費、送料無料がどこかで当たり前といった意識が強いところにある。中計の会見でも、ヤマトホールディングスの山内雅喜社長が、「あえて言うなら、送料無料という言い方は適切ではないのではないか」と疑問を呈したが、一度感じた送料は余分な出費といった認識はそうそう変わるものではない。通販事業者にとっても商品の値引きを行うよりは送料を低く抑えたほうが、顧客の支持を得られるはずだ。

 

 消費者が適正な対価を払わないとどうなるのかは火を見るよりも明らかです。企業は消費者の希望に沿うように安価で商品を提供し、そこから利益を得るためにコストカットを図ります。原材料費や設備は簡単に削れませんので、殆どの場合は人件費のカットに繋がります。こうして労働者の所得は低くなり、それに伴い安値を求める消費者となっていきます。

 

 この負の循環を解消する手段は一つだけです。上昇したコストは価格に転嫁しましょう。そしてその売上から十分な賃金を払い豊かな消費者を生み出しましょう。

 

 そういった意味で明るい記事が出ていました。

宅配便一斉値上げは「物価上昇の号砲」になる可能性が高い | 重要ニュース解説「今を読む」 | ダイヤモンド・オンライン

これは、他の業界の企業にとって、「自分が苦しい時にはライバルも苦しいのだから、ライバルが追随値上げをする可能性も十分にある」という力強く、頼もしいメッセージとなったはずである。メッセージを受け取った他業界の企業も、総じて非正規労働者の時給上昇に悩んでいるわけであるから、「うちも値上げしてみよう。ライバルが追随値上げをしてくれれば、顧客を失わずに利益が増えるのだから」と考える可能性は十分にある。

 

 この件を危機に企業が適正な対価を様出来る社会になれば政府が目指す物価上昇も実現は近づいてくると思います。

 

 最後に、値上げを断行した鳥貴族の社長のインタビューで面白い一説がありました。

鳥貴族社長に聞く、298円への値上げに踏み切った舞台裏 | 『週刊ダイヤモンド』特別レポート | ダイヤモンド・オンライン

――実際、値上げを決めた時の社内の雰囲気はどうでしたか。

 みんなびっくりしていましたね。「そんな方法あったんだ」と(笑)。

 

 今の日本のビジネスマンには値上げするという発想自体が無くなってしまっているのでしょうね。値上げ=悪。この風潮をなくしていくことは重要な課題であると思います。その為に、私の一押しが冒頭から述べている「フェアトレード」の考え方です。