続・子どもの貧困問題

 先日の子どもの貧困に関するエントリで取り上げた記事ですが全5回の連載記事が最後まで公開されました。

 

メディアが作る「理想の貧困」 当事者を傷つける「テンプレの物語」 - withnews(ウィズニュース)

支援される資格って?「理想の貧困」頑張れない理由も知って欲しい - withnews(ウィズニュース)

月17万円でも苦しい…「理想の貧困」の誤解、家計簿でくつがえす - withnews(ウィズニュース)

 

 連載を通して貧困家庭で育った子どもたちが世間や、メディアひいては支援団体からさえも理想の貧困像を押し付けられて窮屈な思いをしているという趣旨はよく伝わってきました。最後の記事ではそれに対する取り組みとして家計簿体験を通じて貧困家庭の実態を理解しようとする取り組みについても語られていました。我々読者の側としては貧困問題について考えるスタートラインに立つだけの前提知識を得ることができたのではないでしょうか。

 

 ちなみに、私個人としては所謂「貧困叩き」はマスメディア不信の問題だと考えています。ご紹介した記事内でも散々取り上げられているようにマスメディアのストーリーありきの報道姿勢に対する拒絶反応という見方です。その為、この記事の5人の若者のインタビュー記事に対しても一定のバイアスがかかっている可能性を捨て切れていません。だからこそ、当事者の声よりまずは定量的な数字を示してくれ!と言いたくなるのかもしれません。

 

 さて、そんなタイミングでおあつらえ向きの記事がありました。

toyokeizai.net

 

 子どもの貧困で最も重要ともいえる教育に関する問題です。

公立学校の年間平均では、小学6年生で15万3000円、中学1年生で15万6000円、中学2年生20万円、中学3年生38万円(文部科学省「平成26年度『子供の学習費調査』の結果について」)となっている。

中学3年生の補助学習費が公立中学校であっても38万円とダントツに高くなっていることを指摘できる。中学3年生は高校入試を控えているため、その準備のために塾などの学校外で勉強することに多額の費用を払っていることを意味している。

 

 非常に大きな額ですね。前回のエントリで触れた相対的貧困世帯にはかなり厳しい金額だと思います。

 

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出典:平均38万円!「塾代が払えない」問題の処方箋 | 国内経済 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

 こちらの表を見れば世帯年収による子どもの教育へのお金のかけ方の差は一目瞭然です。ここまでは多くの方が直感的にも納得し得る前提だと思います。

 

 大切なのはその前提を元にどういった議論を進めていくべきかということです。まず、教育機会の平等の為に「義務教育だけでは足りないのか」という論点があると思います。多くの子どもにとって一定レベル以上の学力をつける為には塾に行くことは必要だと推定できるかもしれません。それに対してどういった策があるでしょうか。

 

第一に、低所得階級に教育バウチャーを支給することで、塾に行く可能性を与える策がある。これは、実際に「スタディクーポン」という形で、経済的理由で塾に行けない子どもへの支援に活用されている。

第二は、塾に頼らなくてもよいように、学校においても今では排除されている習熟別学級編成をして、学力の高い子・勉強の好きな子と、そうでない子を別の教室で教える方法がある。

 

 ここで2つのアプローチがあります。

 義務教育だけでは足りないから

  ①みんなが塾に行けるようにする。

  ②塾に行かなくて済むように義務教育を変える。

 それぞれにメリット、デメリットがあると思います。

 

 個人的にはこの記事の筋立ては非常に好みで理に適っていると思います。子どもの貧困の問題は単に教育の問題にとどまらないとする意見が多くあるのも存じていますが、解決のための建設的な議論にはこうして問題点をひとつひとつ抜き出した上で事実と客観的なデータに基づいて整理して議論していくことが不可欠です。

 

 えてして感情的になりやすい題材ですので、今後もこの問題に関しては建設的な議論がなされることを望みます。