いろいろな見方があるという話ー国内外のマスコミの報じ方の違い
アメリカのトランプ大統領のTwitterアカウントが一時消滅した件はなかなか考えさせられる問題ですね。
トランプ氏のツイッターアカウント、しばし「消滅」 - BBCニュース
ツイッター社は「社内調査の結果、これはツイッターの顧客サポート従業員によるもので、この日が最終出社日だった。全面的な内部調査を実施している」とツイートで説明した。
企業のリスク管理の問題として捉ると非常に示唆に富んでいます。どのレベルの従業員がどれ程の権限をもちそれが会社にとってどんなリスクとなりえるのかというテーマは業種を問わずに非常に重要なものでしょう。例えばオフィスビルの清掃員の各エリアへの出入り権限をどう設定するべきかといった問題や、小売店でアルバイト従業員にレジ金の管理をどこまで任せるべきかといったアナログなケースでもリスクの評価と管理が必要となります。顧客サポート従業員がどういった職掌でどれほどの権限を有していたのかが分からないので現時点で詳しく論じることはできませんが、Twitter社が1従業員の独断でこのような世界的なニュースとなる事件を起こし得るというリスクをどう評価していたのかは気になるところですね。
他方、このニュースをマスコミ論として考えることもできます。前述のBBCの記事を含めて海外メディアと日本メディアの記事を比べてみると興味深いことが分かります。
■海外メディア
トランプ氏のツイッターアカウントが一時ダウン-退職する社員の行為 - Bloomberg
トランプ大統領のTwitterアカウントを削除 最終出社日の従業員の仕業だった
■日本メディア
Twitter従業員、退職日にトランプ大統領のアカウントを失効させて英雄扱い - ITmedia NEWS
このツイートに対して「その11分間はここ最近で一番幸せな時間でした」「彼は英雄だ」「そのままにしておけばいいのに」など、アカウント失効を歓迎するコメントが多数寄せられている。
トランプ氏はしばしばこのアカウントで対立する政治家などの悪口をツイートするので、Twitterルールに則ってアカウントを停止すべきだという意見もある。特に、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と呼んだツイートは物議を醸した。その際Twitterは問題になったツイートを削除しない理由を「ツイートにニュース性があり、公共の利益に値する」からだと説明した。
ツイッター、トランプ氏アカウント一時無効に 人為ミス :日本経済新聞
一方、ツイッターユーザーの間では「もう一度やってそのままにしておいてくれ」「ツイッターはひどすぎる。偽ニュースだ」といったコメントが飛び交った。
いくつか、リンクを貼りましたが日本メディアの特徴として引用した通り「Twitterユーザーの反応」を記事の中に盛り込んでいるという点があります。ITmedia NEWSに至っては見出しにも反映されています。日本ではお馴染みの報道スタイルですね。
ただ、この「Twitterユーザーの反応」というものはどれ程実態を反映しているのでしょうか?該当記事の画像を見てみると記事配信時点でTwitter社の投稿に対して少なくとも10,952件のリプライがあったことが分かります。
これだけの反応がああれば様々な意見が挙がるのが自然だと思うのですが、その中で紹介している意見に偏りがあれば発信者の恣意的な選別の結果と言えると思います。日経の記事は両論併記の形ですがITmedia NEWSの記事に関しては反トランプ的な意見のみを掲載した上に英雄扱いとまで報じるのは少しばかり異常に感じますね。
こういった恣意的な抜粋により記事に偏った色をつける行為は日本メディアでしばしば見受けられます。これは、記者が情報を選別して記事にするといった形式の記事である以上仕方のないことなのだと思います。明確な意図を持って情報を歪めようとしていなくても、個人のフィルターを通す以上バイアスがかかるのは当然です。
問題は記者がそのことにどれほど自覚的であるかということだと思います。その上で自分がどういうスタンスなのかを明らかにするか、可能な限り客観性を追求するかのどちらかのアプローチが必要になります。
総選挙後のマスメディアを賑わしている「民意」は何かという問題も結局のところそこに行きつくんだろうなと思います。
そんなわけで、ひとつのニュースでもいろんな見方ができるんだなぁという話でした。