自分探しは国民の義務?

  ありきたりな世代論とは一線を画す良い記事だと思います。

 

toyokeizai.net

 

自立したキャリアを実現するべく、彼らが受けるキャリア教育や就職活動も変化していった。「自分探しを前提とした“就職活動”」と「やりたいことを聞かれ続ける“キャリア教育”」の誕生だ。

就職活動で学生が企業に提出するエントリーシート(ES)は平均で25枚前後、多い人は100枚近くに上る。ESでは「志望動機」と「自己PR」の欄が設けられているため、自分がやりたいことや強みを各社の理念や事業内容に合わせて表現する必要がある。こうした「自己分析」というプロセスは、就職活動ではもはや当たり前となっているが、自己分析が行われだしたのはここ20年くらいのことだ。

 

そして、ゆとり教育において「総合的な学習の時間」が導入されたのに伴い、キャリア教育はどんどん広がっていった。さらに2011年の文部科学省の中央教育審議会の答申で、キャリア教育を通して身に付けさせるべき能力として「キャリアプランニング力」(自分のキャリアを自ら形成する力)が掲げられた。

20~30代前半のビジネスマンは程度の差こそあれこうしたキャリア教育と就職活動を乗り越えてきた。彼らにとってキャリアとは「やりたいこと」や「自分らしさ」を土台にして描くものなのだ。そして、彼らが社会によって誘導された「自分らしいキャリア」を求めた結果、転職者が増えているのが実情なのだ。

 

 

 ゆとり教育の結果として常に「個性」を求められることになった子ども達が大人になったわけですが、個性なんてものを必要としていない会社組織の中でも自分探しを続けている結果、転職という選択肢が俎上に上がりやすくなっているということですね。

 

 これは、ポジティブにもネガティブにも捉えることはできると思います。個人レベルで見ると恐ろしいほどのバイタリティーを持った若者はたくさんいますし、ゆとり境域の功罪といった切り口で散々議論されてきたことです。

 

 ここで注目したいのは、この傾向が労働市場を取り巻く環境の変化と相まって日本の労働環境にどう影響するかということです。

 

内定辞退、最多の6割超 学生の売り手市場反映 平成30年春新卒採用(1/2ページ) - 産経ニュース

 

 景気動向にも影響されますがこの先の少子化傾向を見ても労働市場は徐々に売手市場に傾いていくことでしょう。それと並行して労働者の側が自らのキャリア形成を意識して主体的に動くようになれば、自然と新しい働き方が生まれてくると思います。

 

heapsmag.com

 

 いわゆるブルーカラーでも新し働き方が動き出しているようです。

「サタデーファクトリーの製作だと、自分の持っている技術を存分に出し切り、納得いくまでこだわる。ま、そのぶんそのできあがった製作物の売値は高くなるんですけどそのリスクは自分で負えばいい(笑)。そして、人の目に触れる機会ができる。で、俺、あれやったんだと胸を張れる」。

 「ぼくらってよく、人手不足とか逆に余ってるとかいろいろ言われるんですけど、それって元請けが持ってる仕事次第、ってことなんですよね。だから、元請けの仕事のない時期は仕事が減る」。一人親方(事業主)が多い業界ならではの波だ。「それを安定化するんです。元請けの仕事がないときこそサタデーファクトリーの活動期。月収10万アップだ、そういったことも目標にしています。ブルーカラーの収入のボトムアップってところですね」。

 自分探し、自己表現と経済的側面を両立させた非常に素晴らしい取り組みだと思います。働き方改革はこうした新しい世代によって実現するのかもしれません。