今こそ銀英伝を読もう!

今週のお題「読書の秋」

 

この秋に読むべき本と言えば田中芳樹「銀河英雄伝説」全10巻をおいて他にはないでしょう。 

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

 

 おそらく30代以上のオタクはほとんどが何らかの形で触れた事のあるサブカル一般教養的な作品ですが、この作品がなんと来春から再アニメ化されテレビアニメ、劇場版アニメとして順次公開されていくのです。

 

前回のアニメ化でもその男性登場人物の多さから銀河声優伝説の異名がつくほど豪華な声優陣の共演となった今作ですが、新シリーズでも主要キャストが発表され期待が非常に高まっています。アニメの詳細については本稿の趣旨からそれてしまいますので公式サイトなどをご確認ください。

なんにせよ、作品ファンの方もこれを機に触れてみる方もアニメ放映まで半年前というこのタイミングは銀英伝を読むのにぴったりの時期です。

 

さて、この銀河英雄伝説ですがスペースオペラとカテゴライズされることが多いですが平たく言うと宇宙を舞台にした戦記物です。というとガンダムやマクロスのようにロボットや派手な戦闘をイメージしがちですが、この作品の戦闘描写自体は非常に地味です。戦闘はあくまで戦争として描かれるんですね。これがこの作品の最大の特徴と言えます。全編を通して政治の一手段としての戦争というスタンスが貫かれています。

 

そんなスタンスを反映しているのがまるで歴史の教科書のような文体です。これから初めて読まれるという方の中には序盤で躓く方が多いかもしれません。1巻の序盤はホントに歴史の講義を延々聞かされているような気持になります(笑)。もちろんそこを乗り越えて読み進めていけば非常に魅力的なキャラクター達の群像劇にどっぷりはまることができるでしょう。そのキャラクターたちがおりなす瀟洒な会話劇はこの作品の大きな魅力の一つでもあります。名言や迷言を数多く生み出しオタクカルチャーに多大な影響を与えた作品ですので、いまだ作品に触れたことのない方でもどこかで耳にしたことのあるセリフがきっとあるはずです。

 

もう一つこの作品を特徴づけている表現手法があります。それは「後世の歴史家」の登場です。宇宙が舞台ですので当然、人類が宇宙に進出してかなりの時が経過した遠い未来が舞台の作品なのですが、物語の語り口は3人称で過去を振り返るモノとなっています。これが前述の歴史の教科書みたいだという文体に繋がってくるのですが(笑)

物語上は現在進行している出来事についてその未来から見た歴史家たちの論評や解説が加わるのです。それにより複合的な視点やさらにその後の展開ともリンクした4次元的な視点が生まれて物語に深みを増しています。この不思議な感覚こそが私を銀英伝ファンにした一因だと思っています。

 

そんなわけでこの秋は銀英伝を読みましょう!初見組も振り返り組もみんなで読んで楽しく語りましょうね。